習作2
遍(あまね)くキリキアを支配する王は言った、「もうよい、
下がれ! 汝の歌は余を嘲弄する戯(ざ)れ歌だ」と、
ジェスターに。だがこの言は王の本心とは逆で
「急くな」と付け加えた。その意味を彼はわかっていた。
王は孤独であったから、滅茶苦茶な歌ばかりでも
そうは不快なわけではない。とはいえ家臣の手前
威厳を損なうわけにもいかないのである。それゆえ
視線をジェスターに送って告げていた、明日(あす)もまた、と。
2019/03/31
竈(かまど)の中を
彷徨う霊が
小さな腕を
言いたげに振る。
2019/04/20